大学や専門学校を卒業生したいわゆる「ホワイトカラー」の就労資格としては、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」があります。この2つの在留資格の端的な違いは、「企業内転勤」には学歴要件が「技術・人文知識・国際業務」より緩和されている点であり、その他日本で行う就労活動の制限については同様の扱いとなっています。

技術・人文知識・国際業務

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の定義は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」となっています。

一言で言えば、「ホワイトカラーの就労資格」と言えるでしょう。

これでは分かりにくいので以下分解して解説してみましょう。

「本邦の公私の機関との契約」とは?

本邦(つまり日本)の公私の機関に該当するものは以下の通り広範囲に及びます。ただし、在留許可の審査上の実務としては、事業の安定性・継続性を立証する必要があるので注意が必要です。

具体例 注意点
政府機関 国、地方公共団体、独立行政法人 外国の機関も含まれる。
民間企業 株式会社、合同会社 外国の法人も含まれる。
個人 個人事業主 日本に事業所等を有している場合

「技術・人文知識・国際業務」3つのカテゴリーについて

大雑把に言えば、理系=技術、文系=人文知識、その他=国際業務となりますが、整理すると以下のようになります。

対象 具体例
技術 理学、工学、その他自然科学の分野に属する技術を要する業務 機械の設計・開発、SE、プログラマー
人文知識 法律学、経済学、社会学、その他人文分野の知識を要する業務 企画、経理、営業、マーケティング、商品開発
国際業務 外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務 通訳・翻訳、語学教師、デザイナー

学歴・職務経験の要件について

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格には、学歴又は職務経験が要求されます。ポイントとしては、以下の通りです。

技術、人文知識の要件ポイント
・大学卒(短大含む)、日本の専門学校卒の学歴があれば可

※海外の専門学校は不可。
※日本の専門学校卒の場合は、専門と業務の関連性が厳しく審査される傾向あり。
・学歴がない場合は10年以上の実務経験が必要。
※大学等の専門課程での職種に関連する科目を専攻した期間を含む。

国際業務の要件ポイント
・3年以上の実務経験を有すること。

※大学を卒業した者が翻訳・通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は実務経験不要。

学歴と職務経験から見た「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の認定可能性を整理すると以下の通りとなります。

「技術」「人文知識・国際業務」の統合の意義は?

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、2014年の入管法改正により従来の「技術」と「人文知識・国際業務」を統合してできた在留資格であり、基本的に従来の考え方と同じです。この統合の意義としては、ソフトウェアの開発などは従来「技術」類型に該当していましたが、昨今は文科系の知識を必要とする会計ソフトの開発など理科系と文科系の単純な分類が困難な専攻と職種が増加してきたという背景があります。ただし、このような業際が曖昧な職種以外では依然として、3つのカテゴリー「技術」「人文知識」「国際業務」それぞれの審査基準が適用されています。

企業内転勤

在留資格「企業内転勤」の定義は「本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が,本邦にある事業所に期間を定めて転勤して,当該事業所において行う理学,工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動(在留資格「技術」に相当)若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務に従事する活動(在留資格「人文知識・国際業務」相当)。」とされています。

この定義を見ると「企業内転勤」は「技術・人文知識・国際業務」と対象とする職種は同様の在留資格でありますが、学歴要件、職歴要件が異なります。

企業内転勤には学歴要件が要求されておらず、「直近1年間で外国の系列事業所に従事していること」という職務要件のみとなっています。

「転勤」の意義

 在留資格「企業内転勤」の「転勤」の定義は、同一企業内の転勤のみならず系列企業内での転勤も含みます。例えば、本店、支店のみならず「親会社」「子会社」「関連会社」間でも対象となり得ます。
以下、それぞれのケースを見ていきましょう。

ケース1:本店・支店間の異動

 本店(本社)から支店(支社、営業所)へ、又は、支店(支社、営業所)から本店への異動が対象。
 支店から支店への異動は認められない。

ケース2:親会社と子会社間の異動

ここで「親会社」、「子会社」の関係とは、「財務諸表規則8条4項」にて定義された「他の会社等の意思決定機関を支配している会社」間の関係を言います。
これらの会社間での異動は、孫会社までの範囲であれば「企業内転勤」の対象となります。

ケース3:子会社間等の異動

子会社間の異動、子会社と孫会社間の異動、孫会社と曾孫会社間の異動は、「企業内転勤」の対象となりますが、曾孫会社間の異動は、「企業内転勤」の対象とはなりません。
ただし、親会社が各孫、曾孫会社まで一貫して100%出資している場合においては、曾孫会社も子会社とみなすことができ、企業内転勤の対象となります。

ケース4:関連会社への異動

「財務諸表規則8条5項」に定義される「関連会社」間の異動については、親会社とその関連会社の異動、子会社とその子会社の関連会社の異動は「企業内転勤」の対象となりますが、子会社と親会社の関連会社の異動、親会社と子会社の関連会社の異動は対象となりません。

「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」どちらを選択するか?

例えば、日系企業の海外子会社に勤務する外国人技術者Aさんを、日本の親会社に呼び寄せて技術者として就労させたい場合において、考えられる在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」のどちらを選択するべきでしょうか?
Aさんが実務経験豊富で、かつ、大学卒であれば結論としては「どちらでもいい」という結果となります。
それ以外の場合においては、Aさんの学歴と海外子会社での従事経験により以下の通り場合分けをして検討します。
・学歴はあるが、海外子会社に入社して1年未満の場合は、「技術・人文知識・国際業務」を検討。
・学歴はないが、海外子会社に入社して1年以上の場合は、「企業内転勤」を検討。
・学歴もなく、海外子会社に入社して1年未満の場合は、「該当資格なし」であり、1年の経過を待ってから呼び寄せを検討。

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