「国際結婚」は、一般的に日本人と外国人の結婚とのイメージが強いが、広く解釈すれば「A国の外国人とB国の外国人との結婚」「日本人同士の海外での結婚」も広義の「国際結婚」とも言えるでしょう。
ここでは、日本人と外国人の結婚に焦点を絞って、日本における外国人の在留資格の観点から、必要な要件を見ていきたいと思います。
日本人同士の結婚の場合、婚姻届を市区町村に届けるだけで、新しい住民票、戸籍謄本を取得することができます。これを日本における「婚姻手続」としましょう。
一方で、日本人と外国人の結婚の場合、日本における「婚姻手続」以外にも、外国人の母国に対する婚姻届、在留資格の取得が必要になってきます。(なお、永住者は、在留資格の変更手続きは不要です。)
結婚に必要な手続きを整理すると次のようになります。
日本人同士での結婚
日本での婚姻届のみ
日本人と外国人(永住者)との結婚
日本では婚姻届のみ
外国人の母国大使館(又は現地結婚登記所)でも婚姻届が必要
日本人と外国人(永住者以外)との結婚
日本での婚姻届け
外国人の母国大使館での婚姻届け
在留資格の認定手続又は変更手続きが必要
以上のように永住者以外の外国人と国際結婚する場合は、在留資格の変更手続きが必要となります。
※ただし、配偶者が正規の在留資格を有する場合は、日本人の配偶者等への在留資格の変更は義務ではありません。
外国人配偶者を日本に呼び寄せる場合
(1)「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書を取得するケース(一般的ケース)、(2)短期滞在ビザで入国後、「日本人の配偶者等」へ在留資格変更を行うケース(特殊ケース)があります。
ここでは、日本人Aさんが中国に居住中の中国人Bさんと結婚するケースを取り上げてみましょう。
(1)一般的ケース
ここでは、現在日本に在住する日本人Aさんが、中国に在住の婚約者であるBさんを日本に呼び寄せる場合における一連の流れを以下のフロー図で確認してみましょう。
単に結婚するから呼び寄せるということにはならず、事前に国境を越えた結婚手続きが必要なのですね。
結婚したにも関わらず呼び寄せまで、一時期的に離れ離れになってしまうのは、納得いきませんが制度なので仕方ありません。
(2)特殊ケース
外国人の母国が査証免除国である場合においては、「短期滞在」から「日本人の配偶者等」への在留資格変更許可申請を行うことも例外的ケースとして認められる可能性があります。
ただし、婚約者が中国人の場合、中国大使館では短期滞在の中国人に対して婚姻要件具備証明書は発行しない方針のようなので、(2)の方法は現実的でありません。
外国人が日本に既に在留資格を有し、居住している場合
この場合、外国人配偶者の方の現に有する在留資格を変更する必要性がある場合と、不要な場合に分かれます。
就労系の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務)の場合
現在の在留資格での更新でも可能であるが、「日本人の配偶者等」の在留資格への変更手続きを行うが一般的。
身分系の在留資格への変更となり、就労要件、永住要件が緩和されるため変更メリット大きい。
永住者
永住者の資格から「日本人の配偶者等」への資格変更はメリットがないため、在留資格関連については、特段の手続きは不要。
日本人の配偶者等
現在の配偶者と離婚し再婚するケースで多いが、「日本人の配偶者等」の在留資格で更新できるか否かは、離婚に至った経緯、新しい配偶者との出会い、これまでの婚姻状況を詳細に説明する必要あり。
必要手続き
ここでは、日本人Cさんが就労系の在留資格である「技術・人文知識・国際業務」を有する外国人のDさんが日本で結婚するケースを想定してフローを説明してみたいと思います。
現在の保有している在留資格から「日本人の配偶者等」への在留資格の変更申請手続きが必要となります。
このように、既に日本に中長期滞在者として日本に正規に在留している外国人の方との結婚手続きは非常にシンプルなものとなっています。
外国人との結婚で注意すべきこと
在留資格「日本人の配偶者等」を取得した外国人は、他の就労系の在留資格と異なり就労の制限が全くなくなることから、「就労目的で日本人と結婚しよう」という外国人の方も少なくありません。いわゆる「偽装結婚」です。「日本人の配偶者等」の在留資格審査に当たって、入国管理局は「偽装結婚でないか?」ということに目を光らせています。特に以下のようなケースでは、知り合ったきっかけ、結婚に至った動機などの双方の結婚の意思を、記録、写真などで立証していく必要があります。
【不許可の可能性が高いケース】
年齢差の大きいケース
年齢差が15歳以上離れている場合などは、婚姻関係が継続できるのか?という疑念が持たれやすい傾向があります。
結婚紹介所などで知り合ったケース
結婚紹介所や出会い系サイト、SNSなどで知り合った場合においては、交際開始から結婚に至る経緯を詳細に立証する必要があります。
交際期間が短いケース
知り合ってから1、2度会っただけで結婚するというのは不自然であり、真摯な結婚意思を立証する必要があります。
日本人配偶者の収入が低いケース
外国人配偶者を扶養するに足る収入、資産が確保できるか否かを立証する必要があります。
結婚、離婚を繰り返しているケース
日本人、外国人とも結婚・離婚を繰り返している場合は、前婚の破綻経緯なども詳しく説明する必要があります。
豆知識 結婚挙行地を日本とするか?外国人の母国とするか?
(1)中国人が中国に居住中の場合
この場合は、在留資格の関係で配偶者となろうとする中国人が来日できないのであれば、片方の配偶者である日本人が中国に渡航して婚姻手続を行うほうが自然です。
この場合、日本人は、婚姻要件具備証明書を日本の法務局で取得して、日本の外務省及び日本の中国大使館の認証を受けた上で、その婚姻要件具備証明書を持参して中国の結婚登記所に両名で赴き、婚姻手続を行うことになります。
そして、その後3か月以内に中国の日本大使館(領事館)にて婚姻届けを提出した後、日本人が一人で日本に入国して、「日本人の配偶者等」の在留資格認定の申請を日本の入国管理局(庁)に行い、認定された後に「在留資格認定証明書」を海外にいる配偶者に送付して、現地の日本大使館(領事館)に査証(ビザ)申請を行い、査証(ビザ)取得後に外国人配偶者が日本に入国するという流れが一般的である。
(2)中国人が日本に居住中である場合
この場合は、日本人も中国人も日本に在住中であり、かつ、中国人も何らかの在留資格を既に有しているはずであるため、日本を結婚挙行地とするのが自然である。
この場合、中国人が駐日の中国大使館にて婚姻要件具備証明書を取得して、日本の市区町村にて婚姻届を提出する。そしてその後、既存の在留資格を「日本人の配偶者等」に変更を行う申請を行うことになる。
なお、この場合でも中国人配偶者の現地の「住民戸口」未婚から既婚に変更する手続きは別途行っておいたほうがいいでしょう。
日本人(又は永住者)と離婚した場合の在留資格「定住者」
「永住者」の箇所で説明した通り、日本人又は永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留している場合においては、「永住者」への在留資格申請が可能です。「永住者」の在留資格を既に取得済の外国人が日本人配偶者や永住者の配偶者と離婚しても、在留資格は「永住者」のまま在留できることになります。
一方で、「永住者」の資格を未取得の外国人の方が、配偶者である日本人(又は永住者)と離婚し、現在の在留資格が「日本人(又は永住者)の配偶者等」である場合においては在留の根拠を失います。この場合、引き続き日本に在留を希望するためには、在留資格の変更が必要になってきます。
まずは「定住者」を検討することになります。(一般的に「離婚定住」と呼ばれています。)
離婚定住の要件(主なもの)
・日本において概ね3年以上正常な婚姻関係・家族生活が継続していたこと
・生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
・日常生活に不自由しない程度の日本語能力を有していること
・公的義務を履行していること
上記「定住者」の資格要件を満たさない場合は、他の就労系の在留資格での在留可能性を検討すべきでしょう。(例:「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」等)
なお、「日本人(又は永住者)の配偶者等」を有する外国人の方が離婚した際には、14日以内に「配偶者に関する届出」を入国管理局宛てに行う必要があります。