専門的技能を前提とした在留資格としては、「技能」と「興行」が思い浮かびますが、活動内容、要件が異なる在留資格です。定義、具体例を整理してみると以下の通りです。

在留資格 定義 具体例
技能 産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動  調理師、建築技術者、パイロット、スポーツ指導者、ソムリエ
興行  演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動 俳優、歌手、ダンサー、振付師、演出家、プロスポーツ選手

このうち「技能」における「スポーツ指導者」と「興行」における「スポーツ等の興行」が重複しているように思われますが、前者はプロ指導者(コーチ等)、後者はプロ選手と理解すればいいでしょう。
なお、アマチュア選手は「特定活動」の在留資格での許可となります。

技能

在留資格「技能」の定義は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」とされています。

「技術・人文知識・国際業務」が知識・学歴を前提とした在留資格であった一方で、在留資格「技能」は正に「自己の経験の蓄積」を前提とするものであります。

入管法の具体例としては、
①調理師、②建築技術者、③外国製品の製造・修理、④宝石・貴金属・毛皮加工、⑤動物の調教、⑥石油・地熱等掘削調査、⑦航空機操縦士、⑧スポーツ指導者、⑨ワイン鑑定等が挙げられていますが、このうち最も数の多い調理師を中心に以下解説します。

調理師(コック)の招聘について

 要件としては、以下の2つとなります。 

・料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案された日本において特殊なものを要する業務に従事すること。
・外国の教育機関における当該専攻を含めて10年以上の実務経験を有すること。 
(タイ料理人については5年以上)

例えば、以下のような場合はNGとなるので注意が必要です。

× 中国の日本料理店で10年の経験のある中国人料理人を日本の中華料理店が招聘する。
× 日本にあるベトナム料理店に、中華料理のコックを招聘する。

この10年以上の実務経験については、本国における実務経験の証明がポイントになります。審査の過程において、電話による照会がなされるなど詳細に調査されますので、きちんと立証できるように準備が必要です。
必要とされる審査資料のカテゴリーは、他の就労資格と同様にカテゴリー1~4に区分されております。

豆知識「技能」、「技能実習」、「特定技能」の違いは?

2019年4月から在留資格「特定技能」が追加されたことに伴い、在留資格のうち、技能の名前が付くものは、「技能」「技能実習」「特定技能」の3つになりました。ただし、これら3つの在留資格は技能の名前が付されているものの、全く異なる在留資格です。
在留資格「技能」で要求されるスキルは「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能」であり、コックなど特定分野の熟練技能労働者を対象としています。
在留資格「技能実習」は、日本で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度であり、そもそも技能を持たない実習生が技能を習得することを目指すものです。
在留資格「特定技能」は2019年4月から導入された新制度であり、1号、2号に分類されます。制度導入の趣旨は、「人手不足の解消」が主目的であり、従来の「技能実習」を発展させたものというのが現実的イメージに近いです。
「特定技能1号」は、「特定産業分野であって相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動」、「特定技能2号」は「特定産業分野であって熟練した技能を要する業務に従事する活動」とされています。
従来の「技能」と「特定技能2号」とも「熟練した技能」を前提としていますが、対象とする産業がそれぞれ別個のものであり、全く別の在留資格です。このように、これら「技能」と名の付く在留資格ですが、全く別個の在留資格であると言えます。ただし、在留資格「特定技能1号」は、「技能実習」を3年間修了した外国人を無試験で移行させることができるなど、本来的には関連性のない制度が連続的に運用されることになっています。

興行

在留資格「興行」の定義は、「演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸術活動(ただし、在留資格「経営・管理」の活動を除く)」とされています。

「興行」ビザの審査要件は、活動内容、活動する人の経験、報酬、会場の面積などが細かく規定されています。この背景としては、2005年3月の法務省令改正以前は、フィリピンパブなどで働くホステスが、この「興行」ビザを取得して就労してきた経緯があり、この改正により一気に厳格化されました。

この「興行」ビザは「芸能ビザ」「タレントビザ」「エンターテイメントビザ」と言われている通り、歌手、ダンサー、俳優、タレント、モデル、ミュージシャン、プロスポーツ選手などが日本でコンサートやスポーツ競技に参加して報酬を得ることを前提としています。なお、タレント本人以外に、専属のマネージャー、ヘアメイクなども「興行」ビザの対象となります。

注意すべきは、プロ演奏家が観光ビザやノービザで入国して(させて)、報酬を得るライブ活動を行った場合、本人は「不法就労罪」に、企画した会社は「不法就労助長罪」に問われるリスクがあります。このようなことにならないためにも、しっかりと「興行」ビザを取得してから、入国してもらう必要があります。

「興行」ビザの審査基準は以下の4つ基準に分けられています。

基準1 演劇等の原則基準

ここで「演劇等」とは、「演劇、演芸、歌謡、舞踏又は演奏」を指す。(以下、同じ)
 演芸等の原則基準では、以下の本人基準、招聘側基準、会場・施設基準を全て満たす必要あります。
 (その他細かい基準もありますが、大まかなものを説明しております。)

本人基準(いずれか満たすこと)

(1)外国の教育機関において当該活動に係る科目を2年以上の期間専攻したこと。
(2)2年以上の外国における経験を有すること。

招聘側基準(すべて満たすこと)

(1)外国人の興行に係る業務について通算して三年以上の経験を有する経営者又は管理者がいること。
(2)五名以上の職員を常勤で雇用していること。

会場・施設基準(すべて満たすこと)

(1)不特定かつ多数の客を対象として、外国人の興行を行う施設であること
(2)風営法第2条第1項第1号または第2号に規定する営業を営む施設である場合は、次に揚げるいずれの要件にも適合していること
ⅰ)専ら客の接待に従事する従業員が5名以上いること
ⅱ)興行に係る活動に従事する興行の在留資格を持って在留する者が、客の接待に従事するおそれがないと認められること
(3)13㎡以上の舞台があること
(4)9㎡(出演者が5名を超える場合は、9㎡に5名を超える人数1名につき1.6㎡を加えた面積)以上の出演者用の控室があること
(5)当該施設の従業員の数が5名以上であること

基準2 演劇等の例外基準

以下の例外基準のいずれかに該当する場合は、基準1の原則を満たさなくても可となります。

(1)国・地方公共団体等、学校等が演劇等の興行
(2)文化交流の目的で国・地方公共団体等からの資金援助で設立された団体による演劇等の興行
(3)観光客を招致するために敷地面積10万平方メートル以上の施設における興行
(4)客席100人以上で、飲食物を提供せず、客の接待をしない施設で演劇等の興行
(5)興行で得られる報酬が1日50万円以上で、かつ、15日を超えない期間での演劇等の興行

基準3 演劇等以外(例:スポーツ選手)の基準

 演劇等以外の場合、つまりプロスポーツ選手の招聘の場合は、基準は以下の通りシンプルになっています。
申請人が演劇等の興行に係る活動以外の興行に係る活動に従事しようとする場合は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けて従事すること。

基準4 興行の活動以外(例:テレビ出演、レコーディング)の基準

 基準1~基準3のいずれにも当てはまらないケースとしては、以下のような基準があります。これは、芸能人のテレビ出演、映画監督、レコーディングスタップなどをイメージすると分かりやすいでしょう。

申請人が興行に係る活動以外の芸能活動に従事しようとする場合は、申請人が次のいずれかに該当する活動に従事し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

イ 商品又は事業の宣伝に係る活動
ロ 放送番組(有線放送番組を含む。)又は映画の製作に係る活動
ハ 商業用写真の撮影に係る活動
ニ 商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音又は録画を行う活動

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