在留資格「経営・管理」は、2014年の入管法改正にて在留資格「投資・経営」の範囲を拡張して創設せれたものであり、従来の外国人起業家向けの「投資経営」に、企業が外国人の経営のプロを招聘するニーズに対応した「経営管理」を追加したものです。

整理すると「経営・管理」ビザは、以下の通りに分解して解釈すると分かりやすいでしょう。

分類 対象 要件
投資系 自ら出資を行う外国人起業家
(起業家による自らの経営)
自ら500万円以上の出資
学歴要件、実務要件なし
管理系 出資は行わないプロ経営者
(サラリーマン経営者の招聘)
 自ら投資は不要
3年以上の事業経営又は管理の経験

経営管理ビザの要件について

「経営管理ビザ」の取得は、各種準備が完了した最後に取得するものであり、会社や事務所を準備したものの「経営管理ビザ」の許認可が得られず事業を断念せざるを得ない事態にならないように慎重に要件を固めていくことが必要とされます。

無事、経営管理ビザを取得して、事業を開始した後においても、事業を適正に運営して利益をしっかりと上げていくことが要求されます。

経営管理ビザの更新時に、赤字が続いている場合など更新許可が得られない可能性もあるので注意が必要です。

細かい要件は多々ありますが、最も重要な要件として、大きく分けて規模的要件、事務所要件の2つあります。

規模的要件

入管法の要件は非常にシンプルです。

・500万円以上の出資がなされること。
・2人以上の雇用を行う規模であること。

実際の運用としては、500万円が投資されることによって、2人以上の雇用がなされている規模と認められ、許可されるケースが多いです。
また、当初出資した500万円は出資後に事業資金として使用しても構いません。
例えば300万円出資して、2人を雇用して適正規模とはならないことに注意が必要です。あくまで当初の500万円以上の出資がなされることが重要です。
ただし、個人事業主の場合は、資本金の概念がないので、事業開始時点までに500万円以上を費消する必要があります。

細かい論点として、送金時に500万円を送金したつもりが、為替レートや送金手数料を考慮していなかったことから着金が500万円未満となってしまい不許可となるケースがありますので注意が必要です。
資本金送金のタイミングは、定款認証後になります。定款認証前に着金しても、会社のお金か個人のお金か判別しないので注意が必要です。

事務所要件

入管法の要件としては、以下の2つが挙げられておりますが、表現が抽象的です。

・経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われているものであること
・財貨及びサービスの生産又は提供が。人及び設備を有して継続的に行われていること。

要は、実態のある事務所空間を独立して継続的に使用できるか否かであり、形式でなく実態を重視する傾向にあります。

悩ましい例を挙げると以下の通りとなります。

判断 事務所形態 解説
自宅 居住用の物件のため不可
自宅兼事務所 事務スペースと居住スペースの入り口が別などの場合、許可の可能性あり。
レンタルオフィス 完全フリースペースは×、間仕切りなどで一定の独占的スペースが確保されていれば〇
バーチャルオフィス 事務所空間の存在しないバーチャルオフィスは×
居住用賃貸物件 賃貸借契約書上の用途が「事務所」又は「店舗」となっていれば〇

協力者による会社設立スキームについて

既に、日本にて留学や就労している外国人の場合、日本に住民票があり、日本に銀行口座を保有していることから、資本金の受け入れ口座の準備、事務所・店舗の賃貸借契約に特段の支障が生じません。
一方で、海外に在住する外国人の方が、これから日本で起業を行う場合、様々な問題が発生し、日本に在住する協力者に会社設立から事務所の賃貸借の手配などを委託する必要が生じてきます。協力者なしに、経営管理ビザを取得することは現実的に困難と言えます。

なお、これらの問題を解決するため、2015年の入国管理法の改正で「4か月の経営管理ビザ」が新設されましたが、やはり、日本に入国後4か月で、銀行口座の開設、会社設立登記を完了させるのは非現実的であり、活用されていないのが実態です。

このように考えると、やはり日本在住の協力者を活用した起業スキームが最もシンプルと言えます。

協力者は、会社設立や事務所賃貸などの煩雑な手続きを外国人本人に代わって遂行する必要がある上に、会社設立後、発起人、取締役(役員)になってもらう必要があり、一定の責任が生じるため、引き受け手となる人は外国人本人と強い信頼関係で結ばれている人が候補となるでしょう。日本に在住の親族であっても、なかなか引き受けてくれる人がいないのが実情だと考えられます。

なお、この協力者は、日本人はもちろん大丈夫ですが、永住者を始めとする身分系の在留資格の方であれば問題ないです。
一方で、技術・人文知識・国際業務や留学ビザ、家族滞在ビザの方は協力者になれないので注意が必要です。

経営管理ビザ よくある質問

共同事業で2人の経営管理ビザを取得できますか?

2人で500万円ずつ出資して、合計1000万円の資本金にしたとしても、同一会社で2人の経営管理ビザが許可されるとは限りません。事業規模や事業実態により、経営者が2人必要なのかが具体的に審査されます。2人で起業したい場合は、一人を代表取締役として「経営管理」を、もう一人を「技術・人文知識・国際業務」などの就労系の在留許可を得るなどを検討するのも一考です。
共同経営については、法務省から以下のガイドラインが例示されているので参考にしてください。
・在留資格「経営・管理」の基準の明確化(2名以上の外国人が共同で事業を経営する場合の取扱い)
平成24年(2012年)3月 法務省入国管理局 平成27年(2015年)3月改訂

従業員の雇用は2人以上必要なのでしょうか?

資本金が500万円以上投下されていれば、必ずしも従業員2名以上の雇用は必要とされません。一人で起業することも経営管理ビザでは認められています。ただし、接客業を行うに当たって、従業員の雇用が全くないのは事業計画上不自然なので、事業の実態に応じた雇用を確保しなければ経営管理の許可は下りません。

現在、技能の在留資格で在留中ですが、経営管理ビザへの変更可能でしょうか?

要件を満たせば可能です。技能の場合は、調理をすることが在留許可の要件である一方で、経営・管理は、経営をすることが目的なので、経営・管理の在留許可取得後は自ら調理ができなくなるので注意が必要です。

現在、留学生です。卒業後に経営管理ビザの取得可能でしょうか?

経営管理ビザには、他の就労資格と異なり特段の学歴要件は要求されていません。ただし、学生の場合は、社会経験が不足していると見られ、事業計画の妥当性が相当に慎重に審査される傾向があります。

現在、留学生です。学生時代にアルバイトで貯金したお金で起業しようと考えております。可能でしょうか?

留学生の場合、資格外活動許可の範囲であれば、アルバイトは可能です。一方で、アルバイトは資格外として例外的に認められているものであり、アルバイトで貯めたお金で資本金とすることは、基本的に認められません。この場合、親から資金援助をしてもらうなどが現実的だと考えます。

現在、留学生です。学校を除籍されました。経営管理ビザへの変更は可能でしょうか?

在留資格の変更手続きの場合、経営管理ビザの審査では、学校の出席状況なども審査の対象になる傾向があります。この場合、一旦、帰国して、新たに経営管理ビザを新規で取得(認定)するのが合理的と言えます。

当初の資本金はいつ送金すればいいでしょうか?

会社の当初資本金の振込先は、発起人の個人口座となり、会社設立後に行う必要があります。具体的には、公証役場における定款認証が完了した後に振り込む必要があります。定款認証前の振込は、会社未成立段階の送金なので、資本金と認知されませんので注意が必要です。

口座に既に500万円以上あります。これを資本金としてそのまま使えますか?

既に個人口座に500万円以上の預金残高があったとしても、これが個人のお金か会社のお金かが判別できません。定款認証後に一旦、500万円以上を引き出して、再度、同口座に振り込む必要があります。当然、新設口座に振り込む方法も可能です。

無店舗営業を考えており、事務所は不要なのですが大丈夫でしょうか?

日本人の会社設立の場合、バーチャルオフィスなどでの会社設立登記は可能である一方で、外国人の起業の場合は、経営管理ビザの取得要件に事務所要件があり、実態のある事務所でなければ許可は下りません。

友人の事務所を間借りして事務所を確保することを考えています。大丈夫でしょうか?
他の法人との共同事務所の場合、基本的に許可が下りません。壁やドア等で明確に事務室スペースが分かれている場合、例外的に許可される可能性はあります。ただし、簡易的なパーテーション(仕切り)だけでは許可は下りません。

日本での事業では、許認可が必要と聞きました。どのタイミングで許可が必要ですか?

日本での事業推進に当たっては、業種によっては許認可が必要となってきます。この許認可は、在留資格「経営管理」の認定・変更前に取得しておく必要があります。認定又は変更の申請時に、許認可証のコピーを添付する必要があります。

60歳を超えた今、日本で起業して日本で暮らそうと思っております。大丈夫でしょうか?

本国で経営実績がある方なら問題ないと考えられますが、老後のリタイアメントの目的で、日本で経営管理ビザを取得して日本に在留するという真の目的がある場合は、入国管理局の審査の目線が相応に上がるのが実態です。経歴、事業目的、事業規模などの事業計画で実態のある事業像を詳細に説明できるかがポイントとなります。

経営管理ビザを取得後、家族を呼び寄せたいと思います。大丈夫でしょうか?

家族滞在の許可には、本人及び被扶養者に扶養する意思と扶養される意思が必要となり、更に扶養できるだけの資金的な裏付けが必要となります。就労目的で家族滞在ビザを取得するのは、原則的にできません。就労目的の場合は、別途、就労系の在留許可を取得する必要があります。ただし、家族滞在の許可後は、資格外活動許可の範囲で、週28時間のアルバイト等は可能です。

このように経営管理ビザは在留資格の中でも最も難易度の高いビザと言え、慎重に要件を固めていく必要があります。

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