永住と帰化の違い
帰化とは、母国の国籍を喪失させ、新たに日本人の国籍を取得することである一方、永住は、母国の国籍を維持したまま、日本に永久的に居住する権利を取得するものであり制度が異なります。
それぞれに共通するものと共通しないものがあり、整理すると以下の通りになります。
【共通するもの】
・住民登録、住民票の発行
(以前の外国人登録制度は廃止され、現在のところ中長期滞在者は住民登録されるようになっている。)
・納税、社会保険、年金への加入義務
・就業に制限なし(ただし永住者は公務員になることができない、)
・社会的信用は同程度(感覚的に帰化のほうが有利に働く場合が多い)
【共通しないもの】
帰化 | 永住者 |
|
国籍 | 日本人 | 外国人(元の国籍) |
母国の国籍 | 喪失する | 喪失しない |
退去強制の可能性 | なし | あり |
在留資格の取消可能性 | なし | あり |
選挙権・被選挙権 | あり | なし |
公務員 | なれる | なれない |
海外への渡航 | 日本のパスポートとなり、殆どの国にノービザで渡航が可能 | 母国のパスポートのままであり、ビザの要否は母国、渡航国の規定による。 |
再入国の許可 | 不要 | 必要 |
在留カード | なし | 更新必要 |
戸籍 | 日本の戸籍に入る | 日本の戸籍に入らない(家族の場合、外国人として表示される。) |
配偶者等(注) | 日本人の配偶者等 | 永住者の配偶者等 |
注)配偶者、子供ともに帰化申請、ともに在留資格を永住者に変更することも検討可能。
永住者への変更申請
在留資格「永住者」は、在留資格を有する外国人が「永住者」への在留資格への変更を希望する場合に、法務大臣が与える許可であり、在留資格の変更手続きによります。
永住許可を取得するには、様々な要件をクリアする必要があり、決してハードルは低くありません。
在留期間(基本原則)
引き続き10年以上日本に在留していること
及び
就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していること
「引き続き10年以上日本に在留していること」とは、途切れることなく在留していることが必要であり、再入国許可が失効した期間があるなどの場合は「引き続き」になりません。
また、再入国許可を受けて出国した場合においても、海外出張などで在留期間の半分以上を海外で過ごしたなどの事情がある場合は、継続要件を満たさない可能性もあることに注意が必要です。実務上においては、長期の海外出張が終了して日本に再入国後、永住許可の申請までに6か月程度以上の在留実績が求められる傾向にあります。
「就労資格等にて5年以上在留していること」とは、直近に5年間において継続して、就労又は身分系の在留資格で生活している必要があります。例えば、10年の日本滞在期間中に、当初5年は就労していたとしてもその後、留学ビザに切り替えて2年間学校に通い、その後3年企業に就職している場合においては、通算の就労期間は5年を超えておりますが、不許可になります。
在留期間(特例)
法務省の「永住許可に関するガイドライン(以下、ガイドライン」によると、様々な特例が設けられております。
日本人、永住者の配偶者
婚姻3年以上、かつ、居住1年
(ただし、申請時点で日本人、永住者の配偶者の資格を得ている必要はない。
実子(又は特別養子)
居住1年
定住者
定住許可から居住5年
高度専門職
ポイントが80点以上の場合1年居住、70点以上の場合は3年居住が要件
永住ガイドラインによる各期間の整理
審査のポイント
直近の在留資格
在留期間3年以上の在留許可を得ていること。
例えば、就労ビザの場合、制度上最長は5年ですが、3年でも当面は可という取り扱いになっています。
年収について
単身の場合、年収は300万円以上というのが一つの目安です。
世帯の場合、扶養家族が増加すると一人70万円~80万円程度の加算した金額が目安となります。
納税
過去において適正に所得税、住民税の支払いを行っているかは当然として重要です。
よくある問題として、所得税・住民税の負担を軽減するために過去に本国の父母などを扶養家族に入れて、税負担を圧縮している例をよく見かけます。永住者の申請直前に扶養を外すという行為は、入国管理局から見れば「実際の扶養状況はどうなのか?」という疑念を惹起させるだけなので、止めたほうがいいです。
健康保険
健康保険の支払いはマストです。納期限を順守して健康保険を支払っている実績が必要です。
年金
よく、健康保険には加入しているが、年金は直接的なメリットがないため支払っていないケースが多く見受けられます。本来、会社に勤務する従業員であれば会社が厚生年金を支払う義務があるものですが、零細企業などでは厚生年金を支払っていない事業所もたまに見かけられ注意が必要です。
犯罪歴
懲役・禁固などの重い刑罰は当然、不許可になるというのはイメージが付きやすいですが、意外に多いのが交通違反です。例えば、過去に5回以上駐車違反を行っている場合などは不許可になる可能性が高いです。交通違反でも飲酒運転などの重度の違反の場合は、1回でも不許可となる可能性が高いです。
渡航歴
永住許可に必要な居住歴は、原則として継続して10年以上必要であり、身分などによって必要とされる期間が異なるというのは前述の通りです。この間に、長く海外に出張などに出かけて再入国許可の期限を超過した場合は、そもそも在留資格が中断するため「引き続き」日本に滞在したことになりません。これ以外に注意すべきは、出張などで長期間日本を離れた場合、再入国の期限内といえども、年の半分以上を海外で過ごしたなどの場合は不許可となる可能性があるので注意が必要です。この場合、帰国後6か月程度を経過してから申請することを検討すべきでしょう。
配偶者の状況
配偶者の在留資格が「家族滞在」で資格外活動許可の28時間の枠を超えて就労している場合、納税がきちんとなされていない場合、社会保険に未加入の場合などは、配偶者だけでなく本人にも監督不行き届きということで、本人自体の永住申請が不許可となる可能性が高いです。
身元保証人
永住申請には、日本人又は永住者で安定した収入があり、納税等の義務を履行している身元保証人が必要です。概ね年収300万円以上が目安となります。多くの場合は、勤務先の社長、上司などとなることが多いでしょう。
なお、身元保証人の責任は、民法の連帯責任を負うような類のものではなく、あくまで道義的なものです。もし、本人が何らかの刑罰を受けたとしても、特段責任を追及されることはありません。
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